サステナビリティメッセージ

学研は社会になくてはならないインフラ

2020年初頭に始まった新型コロナウイルスの感染拡大は、未だ収まりを見せていません。影響を受けられた皆様にお見舞いを申し上げますとともに、感染予防対策に携わる方々や医療従事者の皆様に心より感謝申し上げます。

当社グループは、子育て支援施設、塾・教室、高齢者向け住宅・グループホームなど、多くのお客様と接点を有する事業を展開しています。中でも、子どもや高齢者の皆様へのケア・サービスは、コロナ禍であろうと絶対に止めることはできません。細心の注意を払って感染拡大を抑え事業を継続してきたことは、当社グループの施設が社会になくてはならないインフラであるということを認識させられるものでした。

当社グループは、2020年11月に中期経営計画「Gakken2023」を発表し、急激な外部環境変化に対応するため、事業ポートフォリオの多角化、事業運営体制の再編を図りつつ、持続的な成長に向けた基盤整備を進めてきました。

中期経営計画の初年度となる76期は、こうしたコロナ禍でのスタートとなりました。まさにグループの力が問われた一年でもありましたが、12期連続増収、7期連続増益を果たしました。これも従業員や関係者の皆様方の支えによるものと感謝いたします。

76期の上期は地球の歩き方のグループイン、JPホールディングスとの資本業務提携と、グループのシナジーを活かす投資を行いました。

また、77期になりますが、DXを事業の主とした新会社「Gakken LEAP」を立ち上げ、グループのさまざまなサービスのDX化を推進しています。この流れの中で76期下期の4月には、塾事業の双方向オンライン授業「Gakken ON AIR」をスタートさせました。また、高齢者福祉分野の現場でも介護記録のICT(情報通信技術)化を進め、入居者の皆様の安全性や利便性が大きく向上しました。

私たちの強みは、教育・医療福祉においてリアルな場を持っていることです。例えば、スマホやタブレットは通勤・通学で勉強するには適していますが、家でじっくり勉強するときはやはり紙が向いています。新しいことを知ればより深く学んでみたいという欲求が生まれます。デジタルかリアルかのどちらかではなく、時間や状況に合わせてデジタルとリアルを自由に行き来できる、言い換えればデュアルになることがDXの目的のひとつでもあります。

2021年の出版業界の市場規模は1兆 6,742 億円と3年連続でプラス成長をしています(公財 全国出版協会・出版科学研究所調べ)。今はデジタルの伸びが大きいわけですが、紙の書籍の売上も15年ぶりに増加しました。売れた本は学研が得意とする児童書、中学学参、語学・資格書や文芸書でした。コロナ禍も2年を経過し、巣ごもりから本当の学びを求める動きが進んでいます。この動きはこれからも続くと見ており、海外も同様な流れであると考えます。

2030年までの長期ビジョンでは、当社グループのデジタル分野の売上高を40%以上、グローバル売上を30%以上と設定しています。2025年の売上高2,000億円を目標に、これを達成するために、今後500億円の投資を行います。
介護施設数は、2030年には現在の約2倍の1,000拠点に増やします。施設増には職員が必要ですので、教育機関「学研アカデミー」で年間採用者の約2割に当たる800人を養成します。介護士の養成では、eラーニングや実習というデュアルでの指導が行われます。

これらの投資は、先ほど申し上げたように、当社グループの事業は社会のインフラであるとの考えに基づくものですが、それだけではなく、日本の大きな課題である社会保障費の削減につながるからです。

サービス付き高齢者向け住宅の必要な介護サービスを提供するシステムや、認知症を進行させない研究や実践を通じて、グループホームでは介護度を上げない各種プログラムを充実させています。当社グループの介護施設に多く、長く入居いただくことは、それだけ社会保障費の増大に歯止めをかけることになります。

社会保障費の削減効果については今後開示していきますが、これこそが社会保障制度をサステナブルにする取り組みであり、学研の事業そのものが社会的価値を生み出すものであると考えます。

学研グループは、「戦後の復興は、教育をおいてほかにない」という信念のもと、1946年に古岡秀人が創業した、学習研究社が母体になっています。コロナ禍からの復興も教育と医療福祉が重要な役割を担うことは間違いありません。事業によって社会課題の解決を目指すことは、受け継がれてきた学研グループの精神ともいえます。

持続可能な社会を創る人財の育成が必要

2021年12月にフィリピンを襲った台風では、当社グループの関係者も被災しました。世界各地で起こる自然災害、海洋プラスチック問題や人権侵害などの人為的な課題も含めて、社会の持続可能性を脅かす課題が数多くあることを考えさせられます。
「児孫のために美田を買わず」という言葉があります。本来の意味とは違いますが、私は「美田」をもっと残さなければいけない、環境や社会のよい側面を次の世代に残さなければいけないと考えています。

産業革命以降、われわれはいわば未来を削るかたちで自然資産を激しく消費してきました。たとえば、これから8掛けくらいで次の世代に残していったら、いずれ地球は人が住めない環境になるのではないかと思っています。

10代の人たちを見ると、本当に環境問題に敏感です。「私たちの未来を壊さないでほしい」という気持ちがよくわかります。当社グループはメディアや教育事業の責務としてこうした若い人を育てる必要があります。

当社グループとして温室効果ガスの把握や削減、プラスチックの使用の削減を進めていますが、温室効果ガスを減らせる人、プラスチックを減らせる人を育てることも、事業そのものの温室効果ガスを削減する以上に大きな効果を生み出せるのではないかと考えています。

当社グループはSDGsに取り組むにあたり、重点目標を福祉(SDG3)、教育(SDG4)、まちづくり(SDG11)の3つに絞りました。これはほかの目標に取り組まないということではなく、私たちの強みである3つをてこにすれば、もっと大きな効果が期待できると考えたからです。

これを私たちは「Gakken×SDGsソーシャルアクションマネジメントツリー」として、事業とSDGsの貢献を一体として取り組むことを始めています。その中には、環境問題や介護の分野で持続可能な社会を創る人財を育てる事業も含まれています。各社の取り組みが川のようにつながって大きな流れとなり、私たちが考える社会的価値を生み出していきます。また、この価値が大きければ大きいほど、グループが生み出す経済的価値も大きくなっていきます。つまり、当社グループは、社会的価値を生み出すことによって成長をするといってよいと思います。

学研ホールディングスは、2022年4月に東京証券取引所のプライム市場へと移行しました。ESGに配慮した経営を着実に推進し、ステークホルダーの皆様からの信頼を得続けていく。言葉で言うとこういうことなのですが、私たちがこのマーケットを選んだのは、事業によって社会課題を解決し、サステナブルな社会づくりに邁進するということを社会にお約束することだととらえています。

サステナビリティはグループ経営の重要課題として、サステナビリティ委員会を設置しました。これまでのどちらかといえば事務管理的な役割の組織とは違い、内部統制と同レベルの委員会に位置づけました。社会・環境課題を中心に、事業会社との間には学研ホールディングスの部署が部会の取りまとめを行い、社外の有識者ともコミュニケーションを取って、当社グループのサステナビリティの方向性を定める組織としました。

このサイトのサステナビリティに関する項目も、サステナビリティ委員会のもとで、グループ全社の取り組みとしてまとめたものです。ぜひご一読いただき、今後とも、皆様のより一層のご理解とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

Profile

1959年生まれ。広島県出身。1986年学習研究社(現・学研ホールディングス)入社。2003年学研教室事業部長、2007年執行役員第四教育事業本部長、学研教室事業部長、2009年取締役、2010年代表取締役社長(現任)。


サステナビリティ人財の育成に期待

株式会社 学研ホールディングス 取締役
Caroline F. Benton

Profile

国立大学法人筑波大学副学長・理事(国際担当)。専門分野は「グローバル・リーダーシップ、従業員のモチベーション、ウェルビーイング」。教育事業やグローバル、サステナビリティに関しての知見を有し、指導・助言のために2021年12月に学研ホールディングス取締役に就任。

私が最初に学研グループで感じたのは、若い社員が経営会議の場で積極的に発言していることでした。SDGsの17の目標が示すように社会課題は複雑に絡み合っていて、ビジネスの環境も激しく変わっています。多様な立場の意見を取り入れて、一緒に協力して解決していくことが求められる時代です。

学研グループには、サステナビリティに貢献できるルートが2つあります。ひとつ目は従業員の幸せを高め、社会の一員として一緒にウェルビーイングを発展させることです。SDG8やSDG11がこれにあたります。

もうひとつは、学研グループが提供している価値である教育や医療福祉のサービスそのもので、SDG3やSDG4です。ノーベル平和賞を受賞したネルソン・マンデラさんは、「教育は世界を変えるために使うことができる最強の武器」と言いました。学研は世界を変える力を与えられる企業です。サステナブルでない社会の方向性を変えることができると思います。

エンパシーとレジリエンスがキーワード

世界経済フォーラム(ダボス会議)で語られていることですが、エンパシー(共感)が重要だということです。コロナ禍のこの2年間で、学生も社会人もきついストレスを受けました。私はエンパシーが、学研グループがサステナビリティに取り組むキーワードのひとつだと考えます。他人からエンパシーを感じ取れば、ストレスが緩和され勉強が進み、生産性が上がってバーンアウト(燃え尽き)も減らせます。

また、VUCAといわれる将来の予測が困難で複雑な問題を解決するには、異分野、外国の人、違う産業など多様な人と一緒に協力することが重要です。必要とされる力も変わってきており、従来型の教育ではなく創造性、自発性を伸ばすアクティブラーニングが必要です。

もうひとつのキーワードとしては、レジリエンス(回復力)を挙げます。逆境をはねのける力というとわかりやすいかもしれませんが、人だけではなく学研グループが行っているSDG11のまちづくりについても当てはまる言葉です。災害に強いというのは、防ぐ力ももちろん、受けてしまったときの回復力も含めた強さが重要です。学研グループのサステナビリティの取り組みに期待します。